新幹線 300系
新幹線 300系は、1990年(平成2年)に登場した東海道新幹線『のぞみ』号用として開発・製造された新幹線車両である。
新幹線 300系は、従来の
新幹線 0系/100系などの先頭車両とは全く異なるスマートな形状をしており、話題を呼んだ。また、営業運転開始当初は、京都駅と名古屋駅の通過し、東京駅〜新大阪駅間を約2時間30分で結んだ。1993年(平成5年)からは、山陽新幹線にも乗り入れ東京駅〜博多駅間を5時間4分で結んだ。
新幹線 300系では新幹線では初となるVVVFインバータ制御(Variable Voltage Variable Frequency)とかご形三相交流誘導モーターの採用、回生ブレーキの装備、アルミニューム合金製車体及び低車高などが施されている。
新幹線 300系の仕様は、26,050(25,000)mm(全長)、3,650mm(全高)、3,380mm(全幅)、711t(編成重量)、電気方式は交流25,000V(60Hz)、モーター出力は300kWとなっており、最高速度は285km/hとなっている。
なお、当初は『のぞみ』号のみの運用であったが、500系、700系及びN700系の運用開始により順次『ひかり』号や『こだま』号での運用が多くなり、現在は『のぞみ』号での運用は臨時列車を除いて無い様である。
また、前期型は乗降用ドアがプラグ型ドアとなっている、パンタグラフにカバーが装着されるなど空力改善を行い騒音低減を図っている。
新幹線 700系
新幹線 700系は、1999年(平成11年)に登場した
新幹線 0系/100系の置き換え用として開発・製造された新幹線車両である。
新幹線 700系は、従来の
新幹線 0系/100系及び300系などの先頭車両とは全く異なる特徴的な形状をしており、デザイン性に賛否両論がある。また、当初新幹線 700系は新幹線 300系の発展型と言われており、車体構造がシングルスキン構造からダブルスキン構造に変更されているが、中間車両の形状は見分けが付き難い。
新幹線 700系ではGTO素子のVVVFインバータ装置をIGBT素子に変更、セミアクティブサスペンションや非線形空気バネの導入など、新幹線 300系で導入・確立された技術を更に改良し、乗り心地の改善を図っている。
新幹線 700系の仕様は、27,350(25,000)mm(全長)、3,650mm(全高)、3,380mm(全幅)、708t(編成重量)、電気方式は交流25,000V(60Hz)、モーター出力は275kWとなっており、最高速度は340km/hとなっている。
また、2000年(平成12年)3月11日からは山陽新幹線において『
ひかりレールスター』(8両編成)としても運用されている。なお、『
ひかりレールスター』の東海道新幹線への入線は無い。
新幹線 N700系
新幹線 N700系は、2007年(平成19年)7月1日に登場した新幹線 300系/500系の置き換え用として開発・製造された新幹線車両である。
新幹線 N700系は、直線区間の最高速度の向上よりも、車体傾斜システムの搭載による半径2,500mの曲線区間における走行速度の向上が図られている。これにより、東京駅〜新大阪駅間を最速で2時間25分で結んだ。
新幹線 N700系の仕様は、27,350(25,000)mm(全長)、3,600mm(全高)、3,360mm(全幅)、700t(編成重量)、電気方式は交流25,000V(60Hz)、モーター出力は305kWとなっており、最高速度は340km/hとなっている。
新幹線 N700系は、先頭車両の全高が後部乗降ドア付近直前までは3,500mm、後部乗降ドア付近以降は中間車両の全高と同じ3,600mmとなっている。
また、新幹線 N700系は、車両間の連結面を全周にわたってゴム製幌で覆い、高速走行時の空気抵抗の改善と車両内外の騒音の低減を図っている。
新幹線 500系
新幹線 500系は、1996年(平成8年)に登場した西日本旅客鉄道(JR西日本)の新幹線車両である。山陽新幹線区間(姫路駅以西)では、国内最速の営業最高速度300km/hでの運行を実現している。
新幹線 500系は、これまでの新幹線とは全く異なる先進的なフォルム及びカラーリングをしている。新幹線 500系の登場当初から形状が話題を呼び、デザイン各賞も受賞した。現在でも、人気の高い新幹線車両である。
新幹線 500系では、空力を考慮した鋭く尖った前頭部形状や円形状車体断面の採用、アルミニウム合金ハニカム構造車体による高剛性と軽量化、全電動車編成による編成出力の高出力化などを図っている。また、翼型パンタグラフの採用や更にボルテックスジェネレータの採用など、細かなところまで空力に配慮をしている。
新幹線 500系の仕様は、27,000(25,000)mm(全長)、3,690mm(全高)、3,380mm(全幅)、688t(編成重量)、電気方式は交流25,000V(60Hz)、モーター出力は285kW/275kW(かご形三相誘導電動機)となっており、設計最高速度は320km/hとなっている。
1996年(平成8年)1月に開発・製造された1編成(W1)は、モーター出力は285kW(かご形三相誘導電動機)、編成出力は18,240kWとなっている。1997年(平成9年)7月から1998年(平成10年)10月にかけて開発・製造された8編成(W2〜W9)は、モーター出力は275kW(かご形三相誘導電動機)、編成出力は17,600kWとなっている。
(新幹線 0系編成出力:11,840kW、新幹線 100系編成出力:11,040kW、新幹線 300系編成出力:12,000kW、新幹線 700系編成出力:13,200kW、新幹線 N700系編成出力:17,080kW(いずれも16両編成の場合))
これにより、山陽新幹線区間では営業最高速度300km/hでの運行、東海道新幹線区間では営業最高速度270km/hでの運行を可能にしている。新幹線 500系における各最速所要時間は、東京駅〜新大阪駅間が2時間37分、新大阪駅〜博多駅間が2時間23分、東京駅〜博多駅間が4時間49分である。
しかし、動力性能や空力性能は優れているものの、先頭車両の乗降口が1カ所、先頭車両の運転席側の乗客座席の特異な編成、居住性などの運用上の課題が多く、東海道新幹線区間では新幹線 300系よりも早く退役した。
新幹線ドクターイエロー923形T4
新幹線ドクターイエローは、正式名称を新幹線電気軌道総合検測車と言う。ドクターイエローの名称の由来は、この新幹線電気軌道総合検測車の車両の色がイエローであるからである。
新幹線ドクターイエローは、新幹線区間の線路のゆがみ具合、架線の状態及び信号電流の状況などを走行しながら検測できる新幹線車両である。この検測結果は、東海道・山陽新幹線の新幹線情報管理システム(SMIS:Shinkansen Management Information System)に送信され、保線作業データとして活用される。
新幹線ドクターイエロー923形T4は、2000年(平成12年)に新幹線 700系をベースに時速270km/hで運用できる車両として開発された。新幹線ドクターイエロー923形T4は、先頭車両の前照灯の下方・車体中央に前方監視カメラの設置、レーザー光を使用した軌道検測などそれ以前の新幹線ドクターイエローから改良されている。
新幹線ドクターイエロー923形T4の編成仕様は、1号車:変電/電車線/信号/通信測定台・電気/施設測定機器、2号車:高圧室・電気関係測定機器、3号車:観測ドーム・電気倉庫・電力データ整理室、4号車:(軌道検測車)軌道検測室・施設データ整理室・施設倉庫、5号車:観測ドーム・休憩室、6号車:ミーティングルーム・高圧室・電気関係測定機器、7号車:電気/施設測定機器となっている。
ワット(watt)
ワットは、仕事率、工率及び電力を表すSI(The International System of Units)の単位(SI組立単位)である。
仕事率や工率を表す単位には、従来・一般的には馬力(Pferdestarke)が用いられていた。この馬力の定義は、『1秒間に75重量キログラム(kgf)の重量を1メートル(m)動かす時の仕事率』となっている。
すなわち、1馬力(ps)は75m・kgf/sであり、これをSI系単位であるワット(W)に換算すると1馬力(ps)≒735.49875W(1W≒0.00136馬力(ps))である。
また、電力としてワット(W)は、『回路に1ボルト(V)の電圧がかかり、1アンペア(A)の電流が流れている時の電力』となっている。
すなわち、1Wは1V・Aであり、1kWの電力の1時間の電力量は1kWhとなり3.6メガジュール(MJ)となる。
VVVFインバータ
VVVFインバータ(Variable Voltage Variable Frequency Inverter)とは、実効電圧と周波数を可変制御することで、交流誘導モータ等を制御する電力変換装置である。
かご形三相交流誘導モーターの特性として、出力回転数は入力される電源の交流の周波数に比例し、また、停止状態から起動する場合に定格電圧を入力すると短絡状態となり大電流が流れてしまうことがある。
VVVFインバータでは、この様な特性を活用・補完して、交流誘導モータが低速回転の場合は、入力する電源の交流の周波数を低くすると共に入力電圧も低くすることで低速時のトルクを確保し、また、高速回転の場合は、入力する電源の交流周波数を高くすると共に入力電圧も高くすることで高速時のトルクを確保している。
VVVFインバータは、こうした制御をリニア(直線的)に行うことで、速度の制御を行っている。
東海道新幹線
東海道新幹線は、1950年代に日本の大動脈である
東海道本線の輸送量が逼迫していたことから、
東海道本線の複々線化が考えられていたが、当時の日本国有鉄道
(1949年(昭和24年)6月1日〜1987年(昭和62年)3月31日)は標準軌道(1,435o)で高速運行を可能とする新線の建設を決定した。
これに拠り、1959年(昭和34年)4月20日に新丹那トンネル(全長7,959m、三島駅−熱海駅間)の起工式に拠り着工した。
東海道新幹線は、1964年(昭和39年)10月10日から東京都で開催されたアジア初の
東京オリ
ンピック開催に間に合わせる形で1964年(昭和39年)10月1日に開業した。
この当時は、
ひかり号は
超特急、
こだま号は
特急と言う名称で運行され、
夢の超特急最高速度200q/hと案内されていた。
そして、1975年(昭和45年)3月からのアジア初の
日本万国博覧会(大阪府吹田市千里)の開催に間に合わせて、1974年(昭和44年)12月から12輌編成から16輌編成に移行した。
なお、開業当時の東京駅−新大阪駅間の所要時間は
ひかり号で4時間、
こだま号で5時間だったが、現在の
のぞみ号で2時間21分となっている。
また、東海道新幹線は、開業当初の営業最高速度
210q/hから、1992年(平成4年)3月14日から運行開始した
新幹線300系の登場に拠り
270q/hに引き上げられ、更には2013年(平成25年)2月8日から運航開始した
新幹線700A系の登場に拠り
285q/hに引き上げられた。